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36話 聖地巡礼で原作カップルの思い出が現実に!?

TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい!ティオ ルシフェリア 聖地巡礼で原作カップルの思い出が現実に!? TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい!


午後の陽射しが、ベッドに差し込む。
二人で他愛のない会話をしながらゆっくりと午前中を過ごした。


「……ティオ様、だいぶよくなってきました」

「ほんと?無理してない?」



ずっと腰をさすってくれて、添えられた手から優しさが伝わってくる。


「ちょっとお腹空いたから、甘いもの食べに行きたいです!……原作に出てきた“あのお店”……パフェが有名なお店どうですか!?」

ティオは心配そうに顔を覗き込みながらも、頷いた。

「うん、いいね。行こうか」

「やった~~~!」


ぎゅっと腕に抱き着くと、微笑みながら頭を撫でてくれる。


(本当に優しさの塊みたいな人だ……好き……)


そして、原作の事を思い出したついでに、気になったことを尋ねてみる。

「そういえばティオ様。前に、原作の中で気になる人と進展があったらヒロインのセレナ様に”報告するね”って言ってましたよね?」

「ん、ああ……うん。もうしたよ」

「――えっ!?いつの間に!?私も原作夫婦に会いたかったんですけど!」

騒ぐルシフェリアに、ティオは困ったように笑って頬を掻いた。


「いや、ルシがレオンに会ったら……またとんでもない妄想を始めそうで……」

「そんなこと……しますね、絶対」

しばらく駄々をこねた後に、少し黙って――ぽつりと呟いた。

「というか……セレナ様にこっそり会いに行ってたなんて……ちょっと妬けちゃいますね」

その言葉に、ティオは目を見開いたあと、優しく笑って、ルシの髪をそっと撫でた。


「ごめん、レオンに用事があったから少し顔出しただけだよ」

「……夫婦ともにティオ様と仲が良いって、原作読んで知ってるから大丈夫ですよ」


そう言って、肩にもたれかかると、ぽつりと呟いた。

「……まあ、私もクラウスと仲良くなったし。友達は友達、ですよね」

「…………え?」

ティオの声色が変わった。

「クラウス……って呼び捨てにしてるの?いつの間にそんな仲良くなったの?」

「あっ、えっと……」

しまった、という顔をした私に、ティオ様はじっと目を細める。

「ルシ。僕のことはいつまでも“ティオ様”って呼ぶのに、クラウスは呼び捨てなの?」

「そ、それは……その、クラウスは別に尊くないから……!」

ティオが頬をむくっと膨らませて、ふいに呟く。

「……ルシ、キスして」


小さな声で、そう言いながら俯く彼が可愛くて、思わず頬をそっと両手で挟んでキスをした。


「可愛い……ティオ様ってやきもち妬くと、甘えん坊になるんですか?」

「……だって怒ったって何もいいことないし。それならルシに甘えた方がいいかなって」


ティオがそう呟いた時、私はふと胸がきゅんと締めつけられるような気持ちになった。


(……ティオ様って、ほんとに優しい)

「……そういうところ、素敵だなって思います」

「え?」

「怒らないで、ちゃんと気持ちを言葉にしてくれるの。すごく、優しくて……好きです」

そう口にしたあと、ぽつりと小さく呟いた。

「……大体の恋愛系の創作物って、気持ちを言葉にしなくて、基本すれ違い続けるものなんですよ。下手したら最終話まで……」

「それ、なんの話……?」

「――色々あるんです!」


目を合わせて笑った後、今度はティオから熱のこもったキスが降ってきた。

「ねぇ、僕のこともさ……“ティオ”って呼んでよ。ずっと敬語だし……いや、今のままでもいいんだけど」

「んー……なんかもう、“ティオ様”って慣れちゃってて……」

はぐらかすように笑うと、ティオはますます不満げに唇を尖らせる。
そんな彼の耳元に、そっと顔を近づけて――

「……ティオ」

小さな声で、でも甘く囁くように名前を呼ぶと、ティオの体がびくんと震えた。

「~~~っ……っ!!」

真っ赤になって固まるティオを見て、ルシフェリアは思わず笑みをこぼす。

「ふふっ、かわいい……」

「もう……」


再び重なる唇、指先が頬をなぞる――
ティオの腕の中で、しばらく甘い余韻に浸っていたふたり。

「……ふふ。幸せ……」

「こら、そんな可愛い顔で見ないで。もう一回キスしたくなるから……」

「だめ。これ以上イチャイチャしたら、甘いもの食べ損ねますよ?」

「うん……それはそれでいいけど、せっかくだし出かけようか」




***


――そして僕とルシフェリアはゆっくりと準備をして皇都の中心部の町まで足を運んだ。



「手、つなぎませんか?」と小さく囁かれて、僕の手はルシの小さな手をぎゅっと包み込んだ。
お互い、少し照れくさそうに笑って、肩が少しだけ触れる距離で歩く。



訪れたのは、皇都にしかない“冷たい甘味”の専門店。
”原作”で僕が一度訪れたことがあるお店だ。

ルシは席に座るなりメニューを見て、目を輝かせる。

「わあっ、美味しそう……! セレナ様と同じいちごパフェにしようかな」

「僕も初めて見たとき驚いたよ。パフェって、ここにしかないって聞いたけど……ルシは初めて?」

「え?パフェ、日本にいた頃は山ほど食べてましたよ!」

驚いてぴたりと手を止めた。

「よくあるスイーツですよ。色んなお店で食べれますし」

「そうなの……?じゃあ、この店のパフェも、もしかして……」

「……ね。もしかしたら、私みたいに“こっちに来た人”が作ったのかも。だって、見た目とか日本で見る感じと同じですもん」

ふたりしてひそひそと話していると、ルシがふと思い出したように呟いた。

「そういえば……このお店、原作ではセレナ様とレオン様がパフェをあーんしてた場所なんですよね」

「……ああ、懐かしいな」

「ちょうどそこにティオ様とお兄様のリュシアン様が現れて、ふたりでからかって……好きなシーンの一つです」

「……はは。そうそう、ちょうど良いタイミングでお店入っちゃって。あのとき二人とも慌てて、顔赤くしてたな」

そんなことを話しているうちに、パフェが運ばれてくる。
いちごが沢山乗ったパフェを口いっぱいに彼女は頬張った。

「ん……おいし……」

その顔が幸せそうで、僕まで頬がゆるんだ。

「はい、僕のもどうぞ」


自分の分をすくって、ルシフェリアの口元まで差し出した。


「え、あーんですか……? ふふ、恥ずかしいです……」


恥ずかしそうに笑う姿すらも愛おしい。


(レオンのことからかったのに、自分もいざその立場になったら……なんでもしてあげたいって思うもんなんだな。)


ルシフェリアが口を開けたその時

ーーカランカラン


音と共にドアの向こうから入ってきたのは、見慣れた兄の姿。
リュシアンだった。

あーんのポーズのまま、目が合う三人。

「…………」

「…………」

「…………続けたまえ?」

ティオがスプーンをそっと下ろすのと、ルシの顔が赤くなるのはほぼ同時だった。



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