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12話 ティオ様の愛が甘すぎて、もうとっくに…

TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい!ティオ ルシフェリア ティオ様の愛が甘すぎて、もうとっくに… TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい!



今日は絶対にティオ様に会わないぞと、朝から自室に籠城。
だって昨日のあれは……あれは……!

(研究室行ったら、ろくなことにならないっ……)

ティオ様はきっとまた家の前に現れるだろう。
でも私は今日は絶対に、出ない。
会わない。
引きこもる!!


(だってもう、今顔見ちゃったら……言っちゃいそう……)


さすがに部屋まではお父様とお母様が許さないだろうし、私が応接室に向かわなければ大丈夫なはず。

そして予想通り、昼頃――

門の前から、ちらりと私の部屋を見上げて手を振るティオ様がいた。


(やっぱり来た!!けど今日は応接室行かない、部屋を出ない!!)

しばらく音沙汰がなく、諦めて帰ってくれたのだろうと思っていたら――

「ルシフェリアお嬢様。お客様をお通ししました」

「……へ?」

勢いよく振り向くと、部屋の扉が開かれて――

「こんにちは、ルシちゃん」

ティオ様、堂々と登場!?

「え? なんで!? 」

「お父様が、“どうぞご自由に”って」

「えええええええええええええ!!!????」


ティオは満面の笑みで部屋へ入って来た。


(え……?もしかしてこれ、親公認になってる!?)

そのままティオはまるで自分の部屋かのように自然にソファへ腰かけた。
静かに重い扉が閉ざされる。

そして――
くい、と手招きしてくる。

「……ねぇ、ルシちゃん。ちょっとこっちおいで?」

「……な、なんですか」

そろりそろりと近づくと、急にぐいっと手を引かれて――
隣に座らされる。

「ねぇ、……僕のこと好きになるまで毎日来るって言ったよね?」

「言ってましたね……」

「じゃあ、今日は確認させて?」

「か、確認……?」

ティオはくすりと笑って、少しだけ顔を寄せてくる。

「……ねえ、ルシフェリア。どれくらい、僕のこと好きになった?」

耳元で囁くような声に、心臓がバクンと跳ねた。

(ち、近いっ……空気が、空気が甘い……)

「そんなの……いちいち言いません」

「ふふ、そうやって誤魔化すってことは……本当は、結構好きなんじゃないの?」

「し、知らないっ」


逃げるようにベッドの上に飛び乗った私を、ティオはゆっくりと追い詰めるように歩み寄って――
そのまま、ふわりと上に覆いかぶさるように私を押し倒した。

「ティ、ティオ様?……近い……」

「……だめだよ、逃げちゃ。僕、ちゃんと話したいのに」

「……な、なにを……」

「君が、僕のことどれくらい好きになってくれたか、だよ」

ルシフェリアの全身にぞくぞくとした感覚が走る。

(だ、だめ、これは……雰囲気が……空気が甘すぎて、くすぐったすぎる……!)

ティオはそのまま、ゆっくりと顔を近づけてくる。

(く、来る!? これは……口、来るのでは!? やばい……心の準備が――)

――と思ったその瞬間。

……ちゅっ

キスされたのは、唇じゃなかった。右の頬。
そして、何度も頬やおでこに音を立ててキスを落とすティオ。

(え……ちょっ……!?)

「……君が、僕のこと、好きになってくれた時に――」

ティオはそっとルシフェリアの唇に指をあてて、甘く囁いた。

「……その時に、口にしても……いい?」

そう囁かれた瞬間――

「~~~~~~~~~~~~っ!!」

頭の中が真っ白になった。

胸がぎゅっと鳴る。
苦しいくらいに熱くなる。
顔なんて、もうとっくに真っ赤だ。

「な、な、な……なに言ってるんですか、バカっ……!!」

思わず枕を手に取って、ティオの顔に向かってバフッとぶつけた。
けれど。

「……んふふっ」


ティオは楽しそうに枕を外して、またにこにこと笑っている。

「な、何で笑ってるんですかっ……!」

「ほんと、可愛いね。……ぎゅ、ってしてもいい?」

「~~~~っ……!」


恥ずかしさと戸惑いに揺れながら、私は何も言えずにただ――小さく、こくりと頷いた。

頷いた私を見てティオは微笑むと、そっと体を傾けて私の上に重なるように、そのままゆっくりと腕を回してきた。
背中を包み込むような、深くて柔らかな抱擁。

その距離の近さに、鼓動が跳ね上がる。

肩越しに囁かれる声は、ひどく甘くて、耳の奥をくすぐる。
密着した胸の鼓動と、肌越しに伝わるぬくもりが、全身をじんわりと熱く染めていく。

「……あったかい。落ち着くね」

「ふふっ……ティオ様重い……っ」


ぎゅっと抱きしめられ、お互いの鼓動を確かめるような静かな時間が流れた。
と思ったその時ーー

耳元にそっと彼の唇が触れた。


「……ルシちゃん、可愛い」


ティオの声は、耳元でふわりとくすぐるように甘く響いた。
その吐息が触れた瞬間、ルシフェリアの体がびくんと跳ねる。


柔らかな唇が、今度は耳たぶに軽く触れる。
その一瞬で、体がビリビリと痺れた。


「ふっ……、や……っ」


やわやわと耳たぶを唇で挟まれる。


「ティオ様……ん、……やめてください……っ」


全身に熱が走り、奥底にあった欲望が湧き上がってくる。



(……もう、キス、したい……)

……だけど。

「……じゃあ、今日は帰るね」

「――――えっ」

あっさりと距離がほどかれ、ティオはいつものにこにこ顔で立ち上がる。

「お父様には、またご挨拶しておくよ。お茶、美味しかったって」

「えっ、えっ、ちょっと待って……」



笑顔で軽やかに手を振りながら出ていくティオを、ルシは真っ赤な顔のまま、ただ見送る――。


(……あ、あれ? ここで終わり!? このえっちな空気で!?キス……しないの……!?)


一人残されたベッドでバタバタと足を動かす。

(なにこれ、なにこれ、わざとなの!?……こんなの好きになっちゃう……って、もうとっくに……――バカ……っ。もう、ほんと、バカ……!!!)

「……私、ちょろすぎ!?!?」

顔を真っ赤にして、ベッドに突っ伏す。


「もう……ティオ様……ずるい……」


でも――その唇は、どうしようもなく、緩んでいた。



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