屋敷の扉が閉まった瞬間、張り詰めていた糸がぷつりと切れた。
もう誰の視線もない。
抑えていた想いが、一気にあふれ出す――。
そのままティオの胸元に手を伸ばし、白シャツの第一ボタンを、かちり、と外した。
「ル、ルシ……?」
唐突な動きにティオが戸惑う間もなく、私はにこりと微笑んだ。
「だって……暑いでしょ? 会場、人が多くて、きっといっぱい汗かきましたよね」
「そ、それは確かに……でも、先にお風呂に――」
「ううん、いい匂いですよ」
そう言って、開いた胸元に顔を寄せた。
「ちょっと、……ルシっ」
首筋から鎖骨へ――柔らかな唇が触れていく。
ちゅっ、ちゅっ、と可愛らしい音を立てて、けれどそれは確実にティオの理性を削り取っていく。
「ま、待ってルシ、本当に汗かいてるから、まずはシャワー浴びて、それから……」
「いやです。今のティオ様がいいんです。……それに、せっかく可愛いドレス、作ったのに」
ごくりと喉が鳴ったと思ったら、ドレス姿の私を上から下まで眺めているのが視線でわかった。
ぞくぞくとする間もなく、ティオの手がドレスの上からそっと身体をなぞり始める。
「ん……」
腰を撫でる指先。
壁際で身体を密着させたまま、ティオがそっと脚を滑り込ませる。
「……っ、ん、ぅ……!」
重なる唇。
深くて、熱くて、焦らすようなキス。
舌が絡まり、くちゅ、ぴちゃっと甘い音が響く。
足の間に差し込まれたティオの太ももに、腰ごと乗せられる。
キスが深くなる度、腰が揺さぶられて、擦れる熱で頭が真っ白になって――
「あ、あっ……」
足が、ふらりと浮いてしまった。
「わっ……!?」
腰から力が抜けて、そのままティオの胸にしがみつくようにして倒れかけるルシ。
「ふふ……どうしたの、キスだけで、腰にきた?」
耳元で、いたずらっぽく囁かれる。
くすぐったくて、悔しくて、でも、びくびくするほど気持ちよくて──
また唇がふさがれる。
今度は、甘く、名残を惜しむように。
彼の脚がぴったりと絡みついたまま、身体の奥に火がついたみたいに、熱がじわじわとこみ上げてくる。
ティオの右手が、胸元のすき間へと滑り込む。
紐を解かれ生まれたわずかな隙間を、指先が巧みに探り当てる。
「……こんなに、簡単に緩められていいの?」
低く囁く声に、ぞくりと背筋が震えた。
意地悪な言葉とは裏腹に、触れる仕草は驚くほどやさしく――
布地の内側から、直接肌をなぞるように円を描いていく。
「ん、ぅ、あっ……」
快感に甘く震える身体を、ティオは腕の中でそっと支える。
玄関という背徳感と、じっくりと煽る愛撫でふたりの熱が、じわじわと上がっていく。
そっと胸の先端を指先で軽く弾かれるたび、甘い痺れが全身を走る。
「あっ……や、あぁ……っ」
「家の中だから声、我慢しなくていいよ」
指先で胸を弄びながら、彼は足を私の間へと深く差し込む。
そのまま腰を押しつけるように動かされ、きゅうっと奥が疼き始める。
「ぁっ……はやく……もっと……」
「ん、だめ。まだ、触れたいところがたくさんあるから」
右手が、やわやわと腰骨をなぞりながら下へと伸びていく。
「……ねぇルシ、ここ見て……」
ティオの視線の先を追うと、私が跨っていた部分がじんわりと濡れていた。
脚のあいだに差し込まれていた彼の足に、どれだけ熱く擦り寄っていたのか。
自分のせいで濡らしてしまったと気づいた瞬間、顔が一気に熱を持つ。
「……こんなに濡らして。可愛いね」
耳元にかすれる声が落ちて、ぞくりと震えが走る。
次の瞬間、ティオの手が腰を掴んでくるりと向きを変えさせた。
「後ろ、向いて。……支えないと、立ってられないでしょ?」
その言葉に、胸が跳ねた。
壁に手をつき、期待と羞恥に頬を染めながらティオに身を預ける。
「……腰、抜けないようにちゃんともたれてて」
優しい声。
けれど、指先は容赦なく、ドレスの裾の奥へと潜り込んでくる。
下着の隙間に指を滑らせ撫で上げられると、びくんと身体が跳ねた。
「んっ……ぁ、や、そこ……」
そのまま、背後からぴったりと寄り添い、ティオの体温が包み込む。
「……今日は式典だったのに、こんなすぐ触れられるドレス着て……」
ぽつりと呟いたかと思えば、ティオの手がさらに奥へと触れてくる。
「……可愛い。ルシ、全部……すごく綺麗」
何度も囁きながら、手を止めずに唇は首筋を撫でる。
ちゅっ、ちゅっ、と吸い付くようなキスがいくつも落とされ、快感に膝が揺らぐ。
「んっ……や、そこ……もう、だめ……」
「ん……もうちょっと」
焦らすように、指先が優しくなぞるだけ。
けれどそのじれったさに、身体は疼いてたまらなくなっていく。
「っ、ティオ様……もう、がまん、できません……早く……して、ください……」
潤んだ声で、甘えるように懇願する。
それを聞いた瞬間、ティオの指がぴたりと止まった。
そして静かに、耳元で囁く。
「……ルシが、そう言うなら……」
腰を引くと、指を抜いて代わりに己の熱を添える。
ドレスの裾の奥、下着をわずかにずらすと――
「いくよ、ゆっくり……」
熱を持った先端が、ぬかるんだ入口を探る。
そして――ずぷっ……と、ぬるんだ音と共に中を押し広げる。
「んんっ……っ、ぁ、は……」
奥へ、奥へと。
優しく、けれど確かな圧で、ルシの中を満たしていく。
「……すごい、きつい……ルシ……大丈夫?」
「だ、だいじょぶ……っ、だから、もっと……」
壁に手をつき、震える身体をなんとか支える。
背後から抱きしめられ、繋がったまま、ゆっくりと動き出す――
くちゅくちゅと湿った音が、静かな別邸の玄関にいやらしく響く。
「はっ……ふっ、…… ティオ様ぁ……っ、そこ……っ、すご……ぃ」
「……奥が気持ちいいの? 」
背中にぴったりと重なるティオの体温。
髪の隙間から落とされるキスが、ルシのうなじを優しく撫でていく。
その間も腰は深く奥を突き上げる。
「んぁっ、だめ……っ、そんなに奥っ、あっ、んんっ……」
「ルシのここ……ぬるぬるで、気持ちいい……」
背後から突き上げられるたび、壁に置いた手がずるりと滑りそうになる。
支えきれずに腰が勝手に揺れて、奥をもっと欲しがるように押しつけてしまう。
「んっ……あ、や……勝手に……動いちゃ……っ」
自分でも止められないくらい、熱に縋るように腰が擦り寄ってしまう。
深く突き上げられるほど、奥で擦れる感覚が甘くて――
「も、もぅ……っ、無理……あっ、やっ……あああっ」
腰を揺らしながら、身体がびくびくと震える。
「ぁっ……ルシ……っ、締め付けすぎ」
内側の甘い渦に捕らわれたまま、奥で彼を抱きしめて離さない。
きゅうっと痙攣するたびに、彼のものを絞り上げるように絡みついて――
「ルシ……もう、無理だ……っ」
抑えていた堰を切ったように、熱を一気に奥へと注ぎ込む。
ルシの震えと、ティオの吐息が重なり、ふたり同時に高みに飲み込まれていった。
足が崩れないように、ぴったりと体を付けたまま腕でしっかりと抱き寄せられる。
荒くなっていた呼吸が、少しずつ落ち着いていく。
私は壁に手をついたまま、そっと後ろを振り返った。
ティオの顔はほんのりと紅潮していて、額には少し汗がにじんでいる。
「……ティオ様」
そっと唇を重ねる。
静かに、甘く、余韻を分け合うように。
短く、何度も重ねるようにキスをしてから、ティオが微笑んだ。
「……お風呂、入ろうか」
そう言って、ティオはルシをやさしく抱き上げた。
「……ごめん。せっかくのドレス……汚しちゃったね」
ティオの視線が、申し訳なさそうに胸元までずり落ちたドレスへ向けられる。
「ふふ、またティオ様が喜ぶようなドレス……作ってもらいますから、大丈夫ですよ」
くすっと笑うルシフェリアを見て、ティオは思わず胸元に押し付けるようにきゅっと抱き直した。
「ほんと……油断も隙もないな、ルシは」
甘い余韻に包まれながら、二人は浴場へ向かって足を進めていった。


