ルシは──見違えるほど後継者らしくなったと思う。
出会った頃から突拍子もないことばかりする子だったけれど、でも優しくて芯があって。
振り回されてばかりの毎日だけど、でも、毎日可愛くて、毎日好きであふれていて。
それに加えて、自分で道を切り開く姿まで見せられて──
そんなことを思いながら、二人で別邸に入り、扉を閉めた瞬間
僕は玄関で押し倒されていた。
「ルシ、ちょ、ちょっと待って……!まだお昼にもなってないでしょ」
慌てて制するも、顔のあちこちに、音を立ててキスが降ってくる。
「待ちません」
「くすぐったい……! もう、ルシ……っ!」
笑い混じりの声が自然と漏れる。
起き上がり、ルシの体を軽々と抱き上げる。
腕の中の温もりを確かめながら、寝室へと歩みを進めた。
***
どれくらい時間が経ったのか、気付けばお昼ご飯のタイミングすら逃してしまった。
乱れたシーツの上で並んで寝ころび、まだ少し息が荒いまま余韻に浸っていた。
ルシは勝ち誇ったように僕の胸に頬を押し付け、満足げに笑みを浮かべている。
僕は苦笑しつつ、額に残る汗をぬぐいながら彼女の髪を撫でた。
「……まだ疲れてるだろうから、少し眠ったら?」
「……ちょっとだけ……」
そのまま、彼女は静かな寝息を立て始める。
肩越しに伝わる呼吸の温もりが、やけに愛おしい。
髪を指先でそっとすくい、頭を撫でながら、胸の奥にこみ上げる幸福を噛み締める。
(あぁ……可愛い。あまりにも積極的に誘惑してくるから最初は驚いたけど、愛情表現まで全力で……そこも可愛いんだよな)
頬を指先で軽くつつくと、小さく身じろぎする。
(……結局、何されても可愛いに行き着くな。……相当、ルシのこと好きなんだな)
そう思いながら、彼女を抱き寄せたまま、ゆっくりとまぶたを閉じた。
***
お昼寝をした後。
私は寝ぼけまなこを擦ると、目の前にははだけたまま眠るティオ様の姿が。
乱れた髪が額にかかり、安らかな寝息を立てている。
(あー……えっちすぎ……終わった後、いつもきちんと服を着るところもまた可愛いのよね)
そんなことを思いながら、そろりと腕の中から抜け出す。
(このあとすぐまた脱がされるとも知らずにね……ふふふ)
心の中でくすくす笑いつつ、キッチンへ向かった。
鍋に水を張り、簡単なスープの下ごしらえを始める。
トントンと野菜を刻む音が、静かな部屋に響く。
やがて、はだけていた服を整えながら、ティオ様が寝室から現れた。
「ルシ、スープ作ってくれてるの? ありがとう」
眠そうな目元と柔らかな笑みが、胸をきゅっとさせる。
「すいません、うるさくしましたか? 顔洗ってきていいですよ」
「うん、ありがとう」
そんな何気ないやり取りに、ふと胸の奥が温まった。
──日常が戻ってきたんだ、と改めて思う。
温かいスープを、二人並んでゆっくりと口に運ぶ。
湯気の向こうで、ティオ様の横顔が柔らかくほころんでいる。
私はそっと身を寄せ、小声で囁いた。
「まだまだ夜は長いから……スープ飲んで、頑張りましょうね」
次の瞬間、ティオ様が盛大に咳き込む。
「……ルシには敵わないな」
スープを飲み干すと、ふたりの間に静かな余韻が落ちた。
湯気の向こうで見つめ合うと、言葉よりも先に空気が熱を帯びていく。
気づけば指先が触れ合い、そのまま自然と絡まる。
「……じゃあ、一緒にお風呂入る?」
その一言に、胸が跳ねる。
視線を絡められた瞬間、息が詰まって──ただ、頷くことしかできなかった。
──そして、二人は浴室へ。
***
浴室に、水音と甘い吐息が混ざり合って響く。
湯気に包まれた空間で、肌と肌が触れ合うたびに、微かな声が零れた。
「……っ、ティオ様……」
「ルシ……こっち見て」
正面から見つめられ、彼の声は湯よりも熱く、私の耳を震わせる。
背に回された手に導かれ、さらに深く抱き寄せられる。
湯気で曇った視界の中、強く抱き寄せられ、腰が深く沈む。
「……あ、あっ……もうだめ……」
水面が揺れ、湯しぶきが跳ねる。
何度も、何度も、力を奪われて、湯の中で膝が笑う。
それなのに、彼は止まる気配を見せない。
「……んっ、や、もう……っ」
耳元で低く笑いながら、彼が囁く。
「ルシが夜は長いって言ったんでしょ?……ほら、もうこんなになっちゃって」
言葉と同時に、深く突き上げられ、声が堪えきれず漏れる。
湯の温かさと、彼の熱が溶け合って、息が整わない。
(……だめ……また……)
頭の奥が真っ白になって、もう何度果てたか数えることも忘れていった。
揺れる水面が湯しぶきを上げ、肌に滴が散る。
熱いのは湯のせいか、それとも──
「……ルシ、かわいい……もっと声、聞かせて」
「や……っ、だめ……ぁっ……!」
強くなった水音に、体がまた沈む。
耳元に落ちる低い声が、背筋をくすぐった。
「……っ、ルシ……きつ……」
低く押し殺したような声が、唇の端から漏れる。
「……ぁ……そんなこと……言わないで……」
顔が熱くなって、視線を逸らそうとしても、顎をすくい上げられる。
「ちゃんと……こっち見て」
そのまま下から突き上げられ、息が詰まる。
(……っ、また……)
頬を伝う湯か汗かわからない滴を拭われ、彼の熱がさらに深く入り込んできた。
「……ルシ……っ、もう……」
深く突き上げられるたび、視界が揺れて、彼の顔が近くなったり遠くなったりする。
「……っ、あ、あぁ……!」
波のように押し寄せる熱に、息が追いつかない。
胸と胸が擦れ合って、心臓の鼓動まで混ざりそうだった。
「……っ、ルシ……もう……いく……」
耳元で吐き出された声に、全身が震える。
(あ……だめ……っ、もう……!)
頭の奥が真っ白になって、湯と熱にすべて溶かされていく。
――力が抜けて、そのままティオの胸にもたれかかった。
湯気の中、彼の腕がしっかりと私を抱き支える。
「……ルシ、顔真っ赤」
優しく額に口づけられ、ようやく荒い息が落ち着いていった。
湯船に身を沈めたまま、ティオ様の腕に支えられて、私は完全に力が抜けていた。
「……ティオ様、気持ちよかった」
ぼんやりした声でそう漏らすと、彼が小さく笑う。
「ふふ、ルシは本当に何でも正直に教えてくれるね。可愛い」
「だって本当なんですもん……ティオ様って、私の反応、覚えてるんですか?いつも気持ちいいところ当たって……すぐ、だめになっちゃいます……」
頬に湯気と熱がこもる中、彼は迷いなく答える。
「うん。ルシのこと、いつも見てるから。……ルシのいいところ、全部覚えてるよ」
その言葉に、のぼせたのか胸の奥まで熱くなる。
「……あがったら、可愛い下着着ちゃうので、覚悟してくださいね」
挑発めいた私の言葉に、彼の瞳がさらに熱を帯びた。


