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R18 34話 未遂だったあの夜の続きを――後編

TL小説に転生した腐女子は推し様を攻めたい!ティオ ルシフェリア R18本編


ぐったりとベッドに体を預けたまま、ルシフェリアが名を呼ぶ。

「ティオ様……」

ティオは微笑んで、その額にそっと口づけた。

「……入れるよ、ゆっくり」

囁く声は震えていた。
喉の奥から洩れた小さな吐息が、ルシの耳元をかすめる。

彼のものが、熱を帯びたままルシフェリアに、そっとあてがわれる。

「痛かったら、我慢しないで。ちゃんと言ってね」

その優しい言葉に、胸がぎゅっとなった。

(……大丈夫、きっと……今日は……)

ティオ様がすごく気にしてたから。
昨日のこと、落ち込んでたから――

(今日は大丈夫……私、ちゃんと受け止めたい)

だけど。

「っ……あ、あああ……っ」

次の瞬間、鋭い痛みが襲ってくる。
思わず指先に力が入り、シーツをぎゅっと握りしめる。

(っ……いたい……裂ける……!)

身体の奥に、異物がゆっくり、ゆっくりと入ってくる。
息ができなくなるような圧迫感。

(でも……ここで痛いって言ったら、ティオ様……絶対やめちゃう)

震える唇を噛みしめる。
腕に力をこめて、ティオの背中にしがみついた。

「ルシ……大丈夫?」

優しい声が耳元に落ちてくる。

「……だいじょうぶ……」

声にならないような囁きで、そう返した。
ティオはほんの少し動きを止めると、そっと背中を撫でて、「ありがとう、ルシ」と切なげに微笑んだ。

その言葉に、胸がまた、じんわりと熱くなる――

ティオが、ゆっくりと身体を沈めていくたびに、ルシフェリアの眉がきゅっと寄っていく。
その表情に気づいたティオは、すぐに動きを止めた。

「……ごめん、ルシ。やっぱり、痛いよね……?」

おでこをぴたりと合わせながら、そっと頬を撫でる。
その手が、とても優しくて。
気遣う声に、ルシの胸がいっぱいになった。

「今日は……ここまでにしておこう」

彼は、離れようとする。

「……いや……」

小さな声だった。
でも、はっきりとティオの耳に届くように、ルシはしっかりと囁いた。

「……痛いけど……ティオ様と、一つになりたいんです」

震えるように告げたその言葉に、ティオの目が揺れる。

「ルシ……」

「大丈夫……っ」

そう言って笑おうとしたけれど、頬にはうっすらと涙が滲んでいた。
ティオはその涙を、そっと親指で拭う。

「……まだ、ほんの少ししか……入ってないんだけど……大丈夫?」

「……えっ?」

ぽかんとした顔で、ルシは見上げた。

「え、これで……まだ少し……?」

「……うん、ごめん……」

「………………」

次の瞬間、ルシの顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。

(う、うそでしょ……!?これで、ほんの少し!?)

「や、やっぱり、ちょっと……ティオ様の、大きすぎます……っ!」

思わずそんな言葉がこぼれると、ティオは困ったように眉を寄せた。


「……ごめん、ちょっと大きい方かなとは思ってたんだけど……」

申し訳なさそうに目を伏せながら、そっとルシの頬に触れる。

「……今日は、特別に……君のこと、すごく……愛おしくて。興奮してるから……こんなになっちゃって……」


震える声でそう打ち明ける彼の顔は、少しだけ赤く染まっていて――

(……そんな顔、されたら……)

胸が、ぎゅっとなる。ルシの胸がまたぎゅっと締めつけられた。


「……我慢できなくなったら、すぐ言って。……ゆっくりするから」

その声も手つきも、いつもと変わらず優しくて。


(好き……)


唇にキスをした後に、ティオはゆっくりと押し進め始めた。
身体の奥までずしりと響く存在感に、思わず爪がティオの背中に食い込む。

(……っ……苦しい……)

ぎゅう、と押し広げられる感覚。
皮膚の内側が、めりめりと裂けていくような感覚。

「……っ、い……ぁ……っ……!」

声にならない吐息が、何度も喉奥から漏れる。
下腹へ広がる圧迫感。
奥へ奥へと進んでくるティオのものが、まだ全部じゃないと知ってるのに、それでも苦しい。

「ルシ、大丈夫……?」

ティオが額を寄せて囁いた。
その唇の温もりが、涙をぬぐうようにそっとおでこに触れる。

「……だい、じょうぶ、です……っ」

本当はまったく余裕なんかない。
でも、それでも離れたくなかった。
彼と、ちゃんと結ばれたかった。


「ぁ……ルシ、全部入った……」

「……っ……ティオ様、の……中に、いる、って……わかります、すごく、っ……」

潤んだ目を伏せ、唇を震わせながらそう呟くと──

「……僕もだよ。ルシの中、温かくて、柔らかくて……気持ちいい……」

ティオはルシを抱き締め、動きを止めてそっと髪を撫でた。

「もう少し、このまま……慣れるまでじっとしてよう」

「……うん……ありがとう……ございます……」

しがみつくように腕を回しながら、必死に呼吸を整える。
涙で滲む視界のなか、ティオの優しい姿だけが見えた――。

「……っ、もう大丈夫……です」

乱れた呼吸を整えながら、ルシは絞り出すように言葉を吐いた。
ティオが一瞬、迷うように眉を寄せたあと──そっと頷く。

「……動くよ。ゆっくり、するから」

そして、腰をほんの少しだけ引いて、再び押し入れるように動き出す。
ぬるりと濡れた感触と、絡みつく粘膜の密着に、ティオの喉から吐息がこぼれた。

「っ……ルシ……っ、すごい……っ」

その甘く掠れた声に、ルシフェリアの心臓がどくりと跳ねた。

(ティオ様……そんな、声……顔見てるだけで……)

けれど、私自身は──

「……んっ……、っ……」

ただただ、圧迫感に支配されていた。
鋭く、重く、下腹の奥をじわじわと押し広げられるような感覚。
痛みは和らいできているはずなのに、気持ちよさなんてまだ感じられない。

(……でも……っ、ティオ様のが、……中に……)

吐息と一緒に、微かに震える声が漏れ出る。
くちゅ、くちゅ、と濡れた音が静かに響くたび、身体の奥がひりひりと疼いた。


「ルシ……大丈夫? やっぱり、まだ痛い……?」

動きを止めかけたティオに、ルシは慌てて首を振る。

「……っ、大丈夫……!」

身体は正直に震えていて、顔も耳も真っ赤に火照っている。
だけど、彼の中にいるというだけで、もう十分に幸せで、満たされていた。

(……気持ちいいのか、まだ、よくわからないけど……ティオ様と、繋がってるって……それだけで……)

何度も揺さぶられながら、ただただ彼に身を任せた。


「ルシ……ごめん……すぐ、だから……」

「……うん……っ」

ぬるぬると音を立てながら、浅く何度か動いたあと、ティオの身体が小さく震えた。

「……っ、……くっ……!」

低く、喉を震わせる声。
きつく抱きしめられたルシの奥に、熱いものが流れ込んでいく感覚があった。

(……ティオ様……)


ぎゅっと抱き合いながら息を二人で整えた。

圧迫感も、鈍い痛みも、まだ引かない。
涙が滲むような微笑みを浮かべながら、そっとティオの髪を撫で続けた。
心だけは、これ以上ないほど満ちていたから。

ティオがそっと体を起こすと、ゆっくりと腰を引いた。
ぬるりと繋がっていたものが抜ける感覚に、ルシは小さく息を呑んだ。

(……抜けた……)

けれどその直後──ティオの動きが止まる。

「……っ、……血……ルシ大丈夫……っ?」

ベッドに滲んだ痕。
ティオは一瞬、息を詰めたように固まり、それから慌ててルシフェリアの太ももをそっと拭った。

「ごめん……っ、僕が、下手だったから……痛かったよね、ごめんね……」

必死に血を拭いながら、ひどく動揺しているティオの声。
その言葉に、ルシの胸がぎゅっと締めつけられた。

「ち、が……っ……」

喉が詰まり、言葉にならない。
涙が一粒、頬を伝って零れ落ちた。

「違うんです……っ……う、ううっ……!」

その瞬間、ルシの身体から堰を切ったように嗚咽が漏れた。


(どうして……こんなに涙が……)


肩を震わせ、涙を溢れさせ、声を詰まらせる。


(嬉しくて、幸せで……よくわからないけど、すごく溢れてくる……)

ティオは拭う手を止めて、驚いたようにルシフェリアを見た。

「……ルシ……?」

「ち、がうの……っ、痛くて……怖かったけど……でも……」

しゃくりあげながら、それでも絞り出すように続ける。

「私、……っ……こんなに優しくされて……大切にされて……幸せでっ……」

ティオの瞳が揺れ、すぐにその身体がルシをそっと抱きしめた。
ティオに抱きしめられながら、ルシの涙はとめどなく溢れ続けていた。

幸福感と共に、想像よりも痛くて驚いたことも一緒に溢れてくる。

「でも……ひっく……いたかっ、た……うぅ……っ、……原作では……セレナ様……痛くなかったって……っ、言ってたのに……!」

声を詰まらせながら、それでも続けた。


「……え? セレナちゃん……?」

「めりめりって……ひっ……裂けるかと思った……うぅぅぅ……っ」


ルシフェリアの震える身体をしっかりと抱きとめたまま、ティオは少しだけ困ったように呟いた。

「……ごめんね、ルシ。」

柔らかい声が、ルシフェリアの頭の上から落ちてくる。

「きっと怖かったよね、びっくりしたよね。ほんとに……よくがんばったね」

そう言って、額にそっとキスを落とす。
私はしゃくり上げながらも、抱き寄せられるその温もりに、すこしずつ呼吸を落ち着けていった。


「……ぅう……大きかった……っ……でも……もっと怖いのかと思ってたのに……痛いだけかと思ってたのに……全然違って幸せでした……ティオ様のこと、もっともっと好きになっちゃって……っ」

「……うん。僕も、大好きだよ」

震える声で、やっとそう伝えたルシを、ティオは優しく抱きしめ返した。

少し息を整えるとぽつりと、ルシフェリアが呟く。


「……えっちな漫画とか、小説では……最初から気持ちよくなるのが定説なんです……」

「……まんが……?」

「イラストで描かれた物語があるんですけど……」


頬を赤くしながら続ける。

「だいたい……最初からすごく気持ちよさそうにしてて……ああ、こんなふうになるのかなって……でも、本当は……そんなこと、ないんだって……薄々気付いてて。だから、ティオ様のせいじゃないんです」

「ふふ、よくわからないけど、わかったよ」

ティオが笑いながら、優しくタオルで汗を拭ってくれる。
額、首筋、肩のあたりまで丁寧にぬぐいながら、時おり髪を梳くように撫でて、「よしよし」と優しい声をかける。

「……ちょっと落ち着いてきた?」

「……はい……ごめんなさい、取り乱して……」

ルシが恥ずかしそうに身を縮めると、ティオは微笑んで「気にしないで」と肩をとんとんと優しく叩いた。
そして、ふと。

「……なんだか凄く幸せで、感情が溢れちゃって……えっちな漫画みたいにはならなかったけど、それよりむしろ……こんなに幸せなんだなって」

「……うん、僕も。ありがとう、ルシフェリア」


もう一度、優しく唇が触れた。
少しだけ恥ずかしそうに視線を逸らして、でもきゅっとティオの手を握る。

「でも……痛くて普通なんですよね? だから、これから一緒に……気持ちよくなるために……頑張りましょう」

その言葉に、ティオは目をぱちくりとさせて、そして――ふっと、堪えきれないように笑った。

「ほんとルシフェリアは前向きだね。……うん。じゃあ“これから”のために、二人で頑張ろうか」

まるで将来設計みたいな響きに、ルシフェリアはまた顔を真っ赤にする。
まだ痛みは残っていたけれど、これ以上ない幸せに包まれながら彼に身を寄せた。


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