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97話 公爵邸で迎える前夜――大切な人たちへ、花嫁の感謝を

絶倫すぎるんです、公爵様・・・っ!セレナ、レオン、公爵邸で迎える前夜――大切な人たちへ、花嫁の感謝を(結婚式 前日 感謝の挨拶) 絶倫すぎるんです、公爵様…っ!

2話ずつ更新!話数注意!お読み間違えにご注意下さい。


結婚式前日。
リナが涙ぐみながら、セレナの最終フィッティングの様子を見守っていた。

「公爵邸で神父さんを呼んで、身内だけで式を挙げる。セレナ様らしくて、きっとあったかい式になりますね……っ」

そう言いながら、目元をぬぐう彼女の姿が、胸に沁みる。

(この人は、私にとって――)

一番最初に、この屋敷で優しくしてくれた人。
何もわからなかった私を気遣い、いつも私のことを一番に考えてくれた。
一緒に笑って、時には泣いて。
まるで姉のように、ずっとそばにいてくれた。

(……本当に、あたたかい人)

「ありがとう、リナ。……いつも一緒にいてくれて。これからもよろしくね」

セレナがそっと腕を伸ばして抱きしめると、リナはぽろぽろと涙をこぼしながら、そっと抱きしめ返してくれた。

「……明日、大事な日ですから……っ、しっかり疲れを取ってきてくださいね……」

「リナ……泣かないで。……ありがとう。行ってくるね」

もう一度ぎゅっとリナを抱きしめて、ユノの施術室へと向かった。


***

ユノの部屋を訪れると、彼女は準備を整えて待っていた。

「あれ、またベル来てるの?」

「はい、ちゃっかりお昼寝していますよ」


ベルは施術ベッドの隣にユノが作ったという専用のクッションの上で丸くなっていた。
セレナはふっと笑って首をすくめる。

「ユノ、いつもありがとう。……ベルともども、ね」

「セレナ様のためなら、いつでも」


ユノはいつものように静かに微笑みながら、手を差し出してくれる。

(最初は、もっと堅い表情をしていたのに……)

最近では、よく笑う姿を見るようになった。
淡々として見えて、その実いつも周りのことをよく見ていて。
公爵家の人々を、私のことを――陰から静かに、でも確かに支えてくれている。

(付き合いは短いけれど……不思議な“縁”を感じる)

まるで、ずっと前から知っていたような――懐かしさに似たものさえ、心に滲んでくる。マッサージを受けながら、セレナはふと出会った時のことを思い出した。

(……最初に会ったとき。“懐かしい”って言ってたの、なんだったんだろう……)


心の中でふとよぎった疑問を胸にしまいながら、マッサージ台に身を預ける。


――不思議な縁。その答えは、いつかまた、わかる日が来るのかもしれない。



***


身体の力が抜けるような心地よさに包まれながら、ユノに礼を言って部屋を後にした帰り道――セレナはふと足を止めた。


この時間なら、備品室にいるかもしれない。
そう思い、静かに扉をノックすると――

「あ、いた。アレク」

彼は棚に向かって書類をまとめていた手を止め、すぐにこちらを振り向いた。

「明日、よろしくね。……いつもレオンを支えてくれて、ありがとう。今日は、ちゃんと感謝を伝えたくて。……ちょっと寄ってみたの」

アレクはいつも通り、控えめな笑みを浮かべたまま深く一礼する。


「……公爵様とセレナ様にお仕えできて、幸せです」


言葉は少ないけど、その表情に彼なりの誠意が滲んでいた。

(アレクは、先代の頃からずっと公爵家に仕えてくれていて……レオンがご両親を亡くしたときも、ずっとそばで支えてくれてたって言ってた……)

その背中は静かで頼もしく、レオンにとっても、きっとかけがえのない存在。
そして、今では私にとっても――

(冷静で、時にはちょっとおちゃめで……本当に、大切な人)

そっと心の中で呟いた。

(……これからも、一緒に公爵家を支えてね……)

心の中でそうそっと呟き、頭を下げた。
そして、胸にじんわりとした温かさを抱きながら、静かに寝室へと戻っていった。


***


寝室へ戻ると、すでにレオンは先に中にいて、窓辺のカーテンを閉じているところだった。
レオンは振り返って私の姿を見つけるとにこりと笑った。

「……遅かったね」

「うん。……ちょっと、みんなに挨拶してたの」

レオンの眼差しが、そっと優しく揺れる。
その瞳に映る自分の姿を見つめながら、セレナは微笑んだ。

「明日、結婚式だね」

「……ああ。やっとだね」


――思えば、本当にいろんなことがあった。


誰からも必要とされずに過ごした、十八年間。
暗闇の中で息をひそめるように生きてきたあの頃――
ただ、静かに時が過ぎていくのを待っていただけだった。

そんな私の世界が変わったのは、レオンと出会った日からだった。

誰かに必要とされることが、こんなにもあたたかくて、心を満たしてくれるものだなんて。

どんな時でも、私の手を握ってくれて。
どんな時でも、私の心を見てくれて。
私という存在を、まるごと肯定してくれる――
心の底から、愛しい人。

(……この人となら、どんな未来も、きっと歩いていける)

それは長いようで、短かった。
たくさんの出来事を乗り越えて、ようやくたどり着く“明日”。

「……不思議だね。あんなに遠く感じていたのに、もう、明日なんだって」

「うん、あっという間だった。……セレナが隣にいてくれて、本当に嬉しい。」

レオンはそう言って、そっと私の髪に触れる。
指先が柔らかくこめかみに滑り、耳元で囁かれる声が心に染み込んでいく。

「明日は、誰よりも綺麗な君を独り占めできる日だ」

「……ふふ、それは明日だけ?」

「違う。……これからも毎日、君を独り占めするつもりだよ」

その言葉に、セレナの頬がほんのりと染まる。
レオンの指先が顎に添えられ、自然と唇が重なった。


優しく、深く、熱を込めて。
言葉では伝えきれない想いが、唇の奥から溢れてくる。

セレナは目を閉じ、そっと彼に身を預けた。

レオンは、いつも以上にゆっくりと――まるで一つ一つを確かめるように、私を抱いた。

幾度も重ねた口づけと、深く注がれる愛情。
静かな寝室に、心音と熱だけが残されていた。

ゆっくりと呼吸を整えながら、レオンの胸に頬を寄せる。
重なった熱はようやく落ち着きを見せ、寝室には静かな鼓動だけが響いていた。

(……明日は、いよいよ結婚式)

そう思うだけで、胸がきゅっと締めつけられるような気がして――でも。

そっと背中に回された腕が、まだ解かれる気配はなくて。
肌に触れる掌は、むしろさっきよりも熱を帯びていて。

(……え?)

ふいに、太腿をなぞるように滑る指先。
そこに込められた熱に、思わず小さく息を呑む。

まだ、終わらないの?
そんな問いが、胸の奥で震えた。

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