ー今ので何回目の絶頂だっただろうか。
向かい合って繋がったまま、肩を上下させて呼吸を整える。
先ほどの余韻でぐったりと身体を預けていると――
次の瞬間、レオンは私を抱き上げたまま、後ろへとゆっくり倒れこんでいった。
「きゃ……っ」
不意に倒れこみ声を上げる。
けれどすぐに、あたたかな胸板に顔が埋まって、安心が広がった。
レオンの上にぴたりと乗ったまま、ゴロゴロと甘やかされる。
「ふふ……レオン、わたし、重くない……?」
「全然。むしろ……もっと、乗っててほしい」
そんな甘ったるいことを、耳元で囁かれて――
胸の奥が、またきゅんと跳ねた。
レオンの手が、腰をやさしく撫でる。
指先が背中を滑って、首筋をくすぐって……甘やかすみたいに、肌をなぞるたび、身体が熱を取り戻していく。
(……あったかい……)
トロトロとした幸福感に浸っていたら――
「……まだ、セレナが欲しい……」
苦しそうに囁くその声に、胸がきゅうっと締めつけられる。
私も、もうわかっていた。
私の身体の中で、レオンがまた大きくなってきていることに。
「……いいよ……」
小さな声で囁くと、レオンは膝を曲げ、私の腰に手を添えると、ぐっと引き寄せるようにして――
下から、深く、ゆっくりと突き上げてくる。
私は胸に頬を寄せ、腕を回して、ぎゅっとしがみついた。
「っ、ぁ……レオン……っ」
奥まで甘く擦られて熱と快感で、意識が溶けてしまいそうになる。
ぬちゅ、ぬぷっ――
また、甘い音が二人のあいだで微かに響く。
さっきまでトロけていた身体が、再び熱を帯び始める。
「……レオン……ぁ……だめ、きもち……っ」
私の言葉を聞いた次の瞬間、ぐっ、と奥深く突き上げられた。
「――っあ、ぁあっ……!」
びくん、と背筋が跳ねる。 甘い衝撃が、身体の奥から一気に駆け上がってきた。
(だめ……こんな、すぐ……っ)
恥ずかしいくらいあっさりと絶頂に達してしまい、レオンの胸で呼吸を整える。
「……まだ、終わらないよ」
熱っぽい吐息とともに、また深く押し上げられる。
「ぁ……まって、いったばっかだからっ……ぁっ」
激しく深く突き上げられるたび、繋がった部分からとろとろと蜜が溢れ、ベッドを濡らしていく。
何度も、何度も、絶頂へ導かれて――
そのたびに、セレナの身体はふわふわと甘い世界に溺れていった。
(もう、何回かわからない……)
重なった肌の熱、絡んだ指先、重なった唇――
どれもこれも、全部、愛しくてたまらなかった。
「セレナ……っ、もう、中に……出したい……っ」
耳元でかすれた声が落ちる。
レオンの腰が、ぐっと深く押し込まれたかと思った次の瞬間――
「――っ、あぁぁっ……!」
最後の強い刺激でまた果てて、中にいっぱい、注がれて――
その温もりに、また身体の芯がきゅうっと震えた。
ゼイゼイと肩で息をしながら、レオンは私を離さなかった。
「……セレナ」
耳元で、切なそうに名前を呼ばれるたびに、胸がじんわりと熱くなる。
汗ばんだ肌と肌がぴたりと重なり、ふたりで熱を分かち合う。
(すごく、幸せ……)
力が入らずレオンの上に重なったままでいる私をレオンは優しく包み込んだ。
「……ふふ」
小さく笑うと、レオンが不思議そうに私を見つめる。
「どうした?」
「……なんでもない。ただ、レオンと……こうしてるの、すごく好き……」
素直な気持ちをぽつりと零すと、レオンがふっと目を細めた。
「……俺も。セレナの全部が愛おしくて、たまらない」
ただ静かに、ふたりの息遣いだけが交差していく。
(レオン……)
繋がったままの温もりを感じながら、私は静かに目を閉じた。
甘い、夢のような余韻の中――
ぐったりとしながらも、ふたり身体を寄せ合って、いつまでも、いつまでも離れられなかった。
***
次に目を開けた時、部屋のカーテン越しに差し込む光は、すっかり夕暮れ色に染まっていた。
「……ん……」
視線を動かすと、レオンはもう起きていて、ベッドの端に腰掛けて私を見つめていた。
「……起きた?」
低く優しい声が耳に届き、私はこくりと頷いた。
「ご飯食べ損ねたね、ちょっと待ってて。」
そう言ってレオンは、そっと私の額にキスを落とし、部屋を出ていった。
(……レオン、何をするんだろう。)
そのまま眠ったはずなのに体が綺麗になっている。
起き上がるとレオンが着せてくれたであろう寝間着を整え、ソファへ腰を下ろす。
しばらくして部屋の扉が静かに開き、レオンが片手に小さなトレイを持って入ってきた。
その上には――サンドイッチが可愛らしく並んでいた。
「……!」
思わず目を見開く。
「サンドイッチ……? レオンが?」
「……ああ」
どこか照れたように、レオンが視線を逸らす。
「実は……こっそり、厨房の使用人に教わってきた。……セレナに、食べさせたくて」
胸がじんわりと熱くなる。
(そんな……そんなことまで、私のために……)
レオンはトレイをそっとテーブルに置き、にっこりと微笑んだ。
「ほら、食べさせてあげる。口、開けて」
「……うん」
素直に口を開けると、レオンがそっと小さなサンドイッチをつまんで、私の唇に運んでくれる。
「……おいしい」
ふわふわのパン、優しい味のハムとチーズ。
何より、レオンが作ってくれたというだけで、涙が出そうなくらい幸せだった。
「ふふ、よかった」
レオンが優しく髪を撫で、もう一つ、そっと口元に運んでくれる。
一口ごとに、胸の奥がほわっとあたたかくなった。
ふたりは、ソファの上で、静かに寄り添い続けた。
ふと窓の外に目を向けた。
暮れかけた空に、まだわずかに残る橙色の光。
頬に触れる空気も、優しくて心地いい。
「……ねえ、レオン」
小さな声で呼びかける。
「ん?」
「ちょっとだけ……お外に出たいな。……少しだけ、お散歩」
レオンは優しく眉を寄せ、私の髪を撫でた。
「疲れてない?」
心配そうなその声に、胸がじんわりと温かくなる。
「うん。少しだけ、外の空気吸いたい。」
そっと微笑みかけると、レオンはほんの少しだけ考えるような間を置き、それからふっと小さく笑った。
「じゃあ……庭園の噴水のところまで、行く?」
「……うん!」
嬉しくなって小さく頷くと、レオンは軽やかに立ち上がり、私に手を差し伸べてくれた。
けれど、手を取った次の瞬間――
「わっ……」
レオンは私をそのまま、ひょいと抱き上げた。
「レ、レオン……!? 散歩なんじゃ……」
慌てる私に、彼は穏やかに微笑む。
「今日は疲れてるだろうから。……歩かせたくない」
優しい声音と、揺るがない抱擁。
私は小さく抵抗しかけたけれど、その腕のあたたかさに、結局何も言えなくなってしまった。
(……レオンに抱っこされるの、嬉しい……)
顔を胸に押し当てると、静かに響く鼓動が耳に心地よかった。
そのまま、ゆっくりと噴水へ向かう。
夜風は少し冷たかったけれど、レオンの体温がすぐそばにあって、寒さなんて感じなかった。
庭園に着くとゆっくりとレオンは下ろしてくれた。
真ん中にある、大理石の噴水を覗き込む。
水面に映る月が、静かに揺れていた。
「……綺麗」
私がぽつりと呟くと、レオンは私の顔をまじまじと見て。
「……セレナの方が、綺麗だよ」
思わず顔が熱くなる。
「も、もう……」
恥ずかしくてうつむく私の額に、レオンはそっと口づけた。
しばらくふたり、噴水のほとりで寄り添い、何気ない会話を交わした。
好きな季節や食べ物のこと。
子どもの頃の小さな思い出。
これからふたりで行きたい場所――
どれもこれも、ふわりと心をあたためてくれる、大切な言葉たち。
小さな幸せを嚙み締めた。
ふたりきりの、甘くて静かな夜だった。


