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38話 湖で笑い合う初デートの午後――帰り道、君の寝顔に「大好き」と囁く

絶倫すぎるんです、公爵様・・・っ!セレナ、レオン、湖で笑い合う初デートの午後――帰り道、君の寝顔に「大好き」と囁く(ピクニックデート 寝顔 キス) 絶倫すぎるんです、公爵様…っ!

レオンが目を覚ましたのは、ふわりと漂ったパンと果物の甘い香りのせいだった。


「……ん」

ゆっくりと体を起こすと、目の前にはセレナとリナが敷いたピクニックシート。
その上に広げられた、色とりどりのご馳走たち。

セレナがぱっと笑顔を咲かせた。

「おはよう、レオン」


アレクが持参した冷たいレモネードを差し出しながら、小さく笑った。

「いい日差しでしたので、ぐっすりでしたね、公爵様」

「……ああ」

レオンはまだ少し眠たげな顔のまま、セレナの隣に腰を下ろした。
花の香りと、陽だまりの匂い。
サンドイッチ、ジューシーな果物、素朴なパイ。

何気ないけれど、今ここにあるものすべてが、かけがえのないもののように感じられた。

(……こんな時間、初めてだ)

小さく胸が熱くなる。

「いただきます」

静かに手を合わせ、みんなでご飯を囲む。

セレナの笑顔が、きらきらと陽光に映えていた。
食事が終わった後、レオンがぽつりと言った。

「……湖、行ってみるか?」

「えっ……湖? 行きたい!」

目を輝かせたセレナに、レオンは微笑みを浮かべる。

「リナ、アレク。……少しふたりで散歩してくる」

「かしこまりました~! 私たちはここで待ってますね!」

リナは笑顔で応え、アレクも静かに頷いた。
湖は丘を少し下った場所にあった。

水面は静かにきらめき、陽光を受けて銀色に光っている。
そよ風に揺れる水草と、澄んだ水の音。

「すごい……湖ってこんなに綺麗なの……?」

セレナは無邪気に湖辺まで駆け寄り、水面を覗き込んだ。

「セレナ、落ちないように気を付けて」

「うん!」

セレナは湖の縁にそっと手を伸ばす。
ぱしゃり、と指先ですくった水が、太陽の光を受けてきらきらと弾けた。

それを見たレオンが、珍しく悪戯っぽい顔をする。

「……」

いたずらを企む少年のように、そっと近づき――

「きゃっ!」

ぱしゃっ!

ふいにレオンが水を弾き飛ばし、セレナの頬に小さな水滴がかかった。

「もーっ、レオンっ!」


セレナが水をすくって仕返しに向かおうとすると、レオンは逃げるようにひらりと後ずさった。

水のきらめきの中で、ふたりは無邪気に笑い合い、はしゃいだ。

(……こんな顔、初めて見る)

レオンの笑顔。 セレナのはじけるような笑い声。
ふたりだけの、かけがえのない時間。

けれど、遊びすぎたせいで、ふたりとも服はしっとりと濡れてしまった。

「……冷えてきたな。戻ろう」

レオンはセレナの手を優しく取ると、そっと自分の上着を脱いでセレナにかけた。

「……ありがとう、レオン」

ふたりは並んで、丘の上のふたりへと帰っていった。

「……随分と楽しそうでしたね」

アレクは目を細めながら、濡れ鼠になったレオンとセレナを見て言った。

「ひゃあっ、セレナ様冷えちゃうー! すぐ乾いたものに着替えましょうね!」

リナは大慌てでブランケットとタオルを取り出し、セレナを引っ張っていく。

「公爵様、こちらもどうぞ」

アレクは冷静にタオルを差し出しつつ、どこか小さく笑った。

「……いい日だな」

ぽつりと、レオンが呟く。
その目には、静かに満ち足りた光が宿っていた。

***


楽しかった時間はあっという間に過ぎ、日が傾き始めた頃。


レオンはセレナを抱き上げたまま、アレクに視線を向ける。

「セレナが寝てしまったから帰りは別に頼む」

「……かしこまりました」

アレクが頷くと、リナもすぐに反応する。

「お任せくださいっ! ふたりはゆっくりどうぞ!」


レオンはセレナを抱えて馬車に乗り込み、帰路へとつく。

馬車が静かに揺れるたび、セレナのふわりとした髪がレオンの肩にかすかに触れる。
彼女は小さく寝息を立てながら、完全に身を預けて眠っていた。

レオンは、抱きしめたい衝動を必死に堪える。

(……可愛すぎる)

上掛けをそっと掛け直しながら、彼女の額にひとつ、やわらかなキスを落とす。
それだけで胸の奥がじんと熱くなる。

(こんなにも誰かを、愛おしく思う日が来るなんて……)

微睡むセレナの指が、彼の服の裾をぎゅっと掴んだ。

(……ああ、もう)

レオンは静かに笑うと、彼女の小さな手を優しく握り返す。

「セレナ……」

寝息を聞きながら、そっと名前を呼ぶ。

こんなふうにただ隣にいられるだけで、すべてが報われる気がする。
彼女の温もりを守るためなら、どんなものでも敵に回せる。
そんな気持ちが、胸の奥で静かに燃えていた。

「……大好きだよ」

誰にも聞かれない小さな声で、そう囁く。
セレナは夢の中でも安心したように、くすっと笑った。

もう、守りたいとかそんな理屈じゃない。
この人を――ただただ、幸せにしたい。

焦がれるような想いを胸に抱えながら、レオンは静かに彼女の額にもう一度キスを落とした。


***

別の馬車の中。

もう一台の馬車では、リナとアレクが向かい合って座っていた。
外の景色はだんだんと夕暮れ色に染まり、馬車の中にも、静かで穏やかな空気が流れている。

最初は気まずい沈黙が続いたが――

「……あの、アレク様」

リナが、おそるおそる口を開いた。

「はい」

変わらない無表情で応えるアレク。
リナは緊張しながらも、少しだけ頬を染めて続けた。

「さっき、公爵様とセレナ様……すごく幸せそうでしたね」

「……ええ。本当に」

短い言葉だったが、アレクの口調はどこか柔らかかった。
リナはそれに気づき、ふっと微笑んだ。

「……私、思うんです。公爵様もアレク様も、少し柔らかくなったなって」

「そう、見えますか?」

「今の公爵様のほうが……ほら、よく笑ってて。優しい表情されてます。アレク様も……ですよ?」

リナの素直な言葉に、アレクは一瞬だけ目を細めた。

「……そうかもしれませんね。奥様のおかげです」

アレクは静かに窓の外に目を向けた。
しばらくの沈黙のあと、リナがまた口を開く。

「……また、みんなでお出かけ出来たらいいですね」

「はい。……また行きましょう」


小さな声だったが、確かにそう答えた。
馬車は揺れながら、静かに城へと向かっていく。

外はもう、星が瞬き始めていた。

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