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26話 公爵様、寝室を改装する。〜従者たちの奮闘と、聖女の微笑み〜

絶倫すぎるんです、公爵様・・・っ!セレナ、レオン、公爵様、寝室を改装する。従者たちの奮闘と、聖女の微笑み(寝室 改装) 絶倫すぎるんです、公爵様…っ!

ーーそれは、公爵様のたった一言から始まった。

「……寝室を改装する。できるだけ早く」

その命令を受けたアレク・ロイエルは、一瞬だけ目を瞬かせた。

(……ああ、まただ)

奥様が来てから、公爵様は確かに変わった。
以前のような冷たい沈黙は減り、どこか表情も柔らかくなった。
それ自体は、長年仕えてきた身としては、心から喜ばしい。――だが。

(問題は、たまに……いや、割と頻繁に無茶を言い出すようになったことだ)



「セレナが、もっと落ち着いて眠れるように。あと、窓の向きも見直したい。月がよく見えるように」

「……はい」

「クッションや毛布の質感も、できるだけ柔らかく」

「……かしこまりました」

「部屋の香りも……彼女が好きそうなものを用意しておきたい」

「…………」

どんどん増える要望。 しかもどれも、“公爵様自身”はどうでもよさそうなものばかりだ。
すべては、奥様のため

(……いや、幸せそうだからいいんだけど)

内心で深いため息をつきながら、アレクは冷静に頷いた。
この人は変わった。
だが、根っこのところでの“不器用な優しさ”は、何も変わっていない。

「かしこまりました。ただし……大規模な改装になりますので、数日は別室にお泊まりいただく形になります」

「構わない。最優先で進めてくれ」

「はっ」

ぴしりと返事をしたアレクだったが―― 背後でリナが、こっそりと眉をひそめた。

(あの……公爵様……その部屋、先月も改装したばかりだったような……)

リナも思わずちらりとアレクを見たが、無言で目だけで「気にするな」と伝えてきた。

ーーこうして、公爵様の”理想の寝室”づくりが始まったのである。

***

数日後。

「リナ、次はこの香油を試してみる。セレナに合うか確認してほしい」

「かしこまりましたっ!」

「あと、寝台の高さも再調整する。彼女の身長に合わせて、乗り降りしやすいように」

「わ、わかりましたぁ!」

(……おかしい、寝台ってこんなに繊細な調整必要だったっけ……)

リナは汗だくになりながら、次々と運び込まれるクッションや香油、試作品のシーツたちを抱えた。

一方、アレクは表情一つ変えずに使用人に指示を飛ばし、調整に奔走していたが――

(……公爵様は基本的に何でも自分でするから、奥様が来るまではこんなに細かいことはほとんど気にしなかったのに)

心の中でだけ、しみじみと呟いていた。

「アレク様……公爵様、すごく張り切ってますね」

「ああ。……だが、それでいい」

アレクはふっと目を細める。

「無表情なようで、あの方は……とても、奥様を大切に思っている。昔を知る者として、こんな姿を見られるのは嬉しいことだ」

リナは感動でうるっとしながら、ぎゅっと荷物を抱きしめた。

「はいっ……! セレナ様も、本当に優しくて、素敵な方ですものね!」

アレクは軽く頷き、ふっと一息。
そしてまた次の指示が飛ぶ。

「よし、次は暖炉の調整だ。夜に冷えるといけない。温度管理も万全にする」

「は、はいっ!」

(がんばろう……公爵様とセレナ様のためにっ……!)

新たな寝室作りは、こうして二人の従者の奮闘によって着々と進められていった――。

***

数日後。
ついに、改装された新しい寝室が完成した。

リナに手を引かれながら、セレナは少し緊張した面持ちで、重厚な扉の前に立った。

「セレナ様……どうぞ、開けてください」

促され、セレナは小さく息を吸い込むと、両手でそっと取っ手に触れた。 きぃ、と静かな音を立てて開かれたその先――

「……わぁ……」

思わず、感嘆の声が零れた。
そこに広がっていたのは、まるで夢のように温かな空間だった。

優しい色合いのカーテンが、午後の日差しを柔らかく透かし、 壁には品のある織物が掛けられている。
広くなった窓からは、夜になればきっと美しい月が見えるだろう。

そして、部屋の中央には、大きくてふわふわの寝台。
その周りには柔らかそうなクッションがたくさん置かれ、ベッドサイドには可憐な花がそっと飾られていた。

「……すごい……」

「寝室の両側には扉をつけました。それぞれ、公爵様とセレナ様のお部屋に直接つながるようになっているんです!」

足を踏み入れた瞬間、ふわりと微かな花の香りが鼻をかすめる。
それは、リナがセレクトした、セレナの好きな香りだった。

「気に入ったか?」

その声に振り返ると、レオンが、少しだけ気恥ずかしそうに立っていた。

「……これ、全部……レオンが?」

「……ああ。君が、もっと安心して過ごせるようにしたかったから」

ほんのわずかに耳まで赤くして、レオンは視線をそらす。
そんな不器用な優しさに、セレナの胸がじんと温かくなる。

セレナはふと、部屋の隅で控えているアレクとリナに目を向けた。

「……アレクさん、リナ。きっと、たくさん頑張ってくれたんだよね……?」

セレナがそう言うと、リナはぱっと顔を輝かせた。
その隣で、アレクは一瞬驚いたように目を見開き――すぐに、柔らかく微笑んだ。

「セレナ様……!」

「い、いえ、我々は公爵様の命令に従っただけで……! ですが……その……」

アレクは少しだけ表情を緩めた。

「公爵様が、こんなに楽しそうにしているのは初めてで……奥様のおかげだと、心から思っています」

「……ありがとう」

セレナは深く頭を下げた。

(こんなに優しくしてもらえるなんて、昔の私なら考えられなかった……)

目頭がじんわりと熱くなるのを感じながらも、セレナは笑顔を浮かべた。

「……でも、私、本当は――」

ふと、セレナはレオンの方へ向き直る。
真剣な眼差しで、彼を見つめながら、そっと囁く。

「レオンと一緒なら、どんな部屋でも、どんな場所でも……きっと、幸せ。」

その言葉に、レオンは少し目を見開き――そして、すぐに静かに微笑んだ。

「……セレナ」

声は震えるほどに優しく、深い愛情が込められていた。

「……でも、どうせなら、最高の場所で迎えたくて。君に、できる限りのものを用意したかったんだ」

そう言って、ぎゅっとセレナの手を握る。
セレナもそっと手を重ね、ふわりと笑った。

ふたりは、暖かい寝室の中で、そっと抱き合った。
まるで、互いの存在そのものを確かめるように――。

アレクとリナは、ふたりの姿に目を細め、そっと静かに扉を閉じた。

「……やれやれ。俺たちの苦労も報われたな」

「はいっ……! 本当に……幸せそう……!」

従者たちもまた、心からの微笑みを交わしていた。

そして、夜が来る。
新しい寝室で、初めて迎える――ふたりきりの甘い夜が、静かに始まろうとしていた。

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